無題

ーーありがとうーーすまないーーー

ーーほんとうにーー

ばきりと音を立てて火に焼べられた薪が崩れ落ちた。

再び静けさを取り戻したタフォーラシアでの野営
深い霧に覆われたこの街はただひたすらに沈黙を守り
耳に届くのは仲間たちの寝息と、
ぱちぱちと爆ぜる火の音だけだ。

こんな日は眠れるわけがないのだ。

レゾ

こんなところで名を聞くとは思いもしなかった。
だがこれが初めてではない。
手がかりを求め潜った遺跡の奥で、
あるいは魔導に関する文献を紐解いていく過程で、
思いもかけずその残滓にでくわすことがある。

そんな時、
身を焦がすような怒りと共に
なぜか、あの言葉を思い出す。

ーーありがとうーーすまないーー

ーーほんとうにーー

奴の最後の言葉
悪党らしく怨嗟の言葉でも吐きながら死んでいけばいいものを
ひどく憤ろしく、なぜかひどく悲しくなる。

我知らず膝を抱え込みきつく目を閉じる。
俺は奴が憎いから裏切った。
俺を裏切ったあいつが憎くて仕方がなかった。
だから、壊したかったのか、取り戻したかったのか
今となっては詮無き問い、
そんな事を考えてしまう自分に嫌気がさす。

後悔などしていないし
俺は奴が憎くて、だから裏切って、殺した。
それでいい。
それだけで、いい。

だが、
本当は、わかっているんだ。
俺が目をそらしている事。

弱くなりかけた火に、薪を投げ入れる。
それは燃えて、爆ぜて、ゆっくりと形をなくし炎の中に消えていった。
それをずっと眺めていた。

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鬱々ゼルガディスさん
実はレゾが関わってくるというのは前々から某記事で知っていたのです。

それに対して岩がどんな反応を見せるのか楽しみだったんですが。
さらりと受け流そうとしたかと思えばどんな人かと問われていらっとしてたり。
全然整理できてないのかなあ、、と。

闘いの中で「あんたがあんなにも見たがっていた世界じゃないか」
と叫んだ彼は、きっとレゾに対して
憎しみ以外の感情もしっかりあったんだろうと。
あげく最後にすまないなんてセリフはかれたら
レゾを憎んでいいいのかシャブラニグドゥが憎いのか。

その辺りの整理がつかずうじうじ悩んでると面白い、という願望でした。